守秘義務を考える
秘密には,大きく分けて,私人間の秘密と国家の秘密があります。
プライバシーというと当然私人間の秘密に関連することがらであり,プライバシーを保護する義務は,国家に対する義務ではありません。
それでは,この頃大きく世間を賑わせている裁判員制度が裁判員に課する守秘義務は,果たして私人の秘密を守るものであるのか,それとも国家に対する守秘義務であるのか?
裁判所の裁判員制度ホームページ(http://www.saibanin.courts.go.jp/)の 「裁判員制度Q&A 」によれば,守秘義務の対象について,裁判員として知り得た被害者などのプライバシーに関わる事項の他,「評議の秘密」にも守秘義務が及ぶとされ,「評議の秘密」の内容について,
評議の秘密には,例えば,どのような過程を経て結論に達したのかということ(評議の経過),裁判員や裁判官がどのような意見を述べたかということ,その意見を支持した意見の数や反対した意見の数,評決の際の多数決の人数が含まれていると考えられています。
と説明されています。つまり,評議の過程や評議の中で述べられた意見について,裁判員経験者は終生語ってはならないのです。もっと具体的に言えば,「他の皆は有罪だと言ったが自分はそうは思わなかった」「私は死刑間違いなしと思ったのに,裁判官は反対意見だった」などと,後日議論(裁判批判)する事は罰則をもって禁じられる,ということなのです。
他方,裁判員選任手続の過程では,守秘義務を課されていない裁判員候補者に,性犯罪被害者の個人情報が開示されることになるという問題が指摘されています。( 裁判員候補者に守秘義務なしで「性犯罪」被害者の実名が - 保坂展人のどこどこ日記 )
さて,裁判員に課された守秘義務は,誰の秘密を守るためにあるのか?
<追記>
6月4日付 asahi.com の記事によれば,裁判員候補者の名簿を被害者に開示するという対策を講じるとの事。たしかに被害者の個人情報を裁判員候補者に開示しなくても済むかもしれませんが,選任された裁判員に個人情報が提供される事を被害者が拒否する手段は,今のところありません。

