2009.10.08

刑事罰の目的

今朝は台風もそうですが,Winny 事件の逆転無罪が大きな話題を呼んでいるようですので,雑感を少々。

私は,詳しい技術も内容も知らない門外漢ですが,本日の高裁判決は刑法理論をすっきりと筋を通しているように見え,好印象です。そもそも刑法は,すでに起きてしまった犯罪という結果に対して,個別に罰を科して犯罪者の矯正(再犯防止)を目指すもの。一罰百戒という言葉もあり,いわゆる一般予防(検察官は好きですね。論告でよく聞きます。)ということも良く言われますが,それを強調すると刑事法廷が立法の場に踏み込むことになってしまう。新しい類型の行為を,従来から存在する犯罪の類型に組み入れて裁くことで一罰百戒,を目的とした強制捜査( Winny 事件に限らずときどき見かけるのですが)は,実は立法権の侵害であり,民主主義とは相容れないということを,捜査機関は肝に銘じてもらいたい。

そういう意味では,著作権侵害を防ぐということは無論大切だけれども,その先鋒を警察などの捜査機関に委ねるのは,刑法の目的を超えるだろうし,刑事手続による事後的個別的な刑罰の執行が,著作権の保護のために十分有効であるとも思えません。

いずれにせよ,ご本人も弁護団の諸氏もみごとな奮闘でした。心からの敬意を表します。

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2008.12.22

刑罰の福祉化と福祉の刑罰化

最近,私は,機会がある毎に「福祉と刑罰が逆転し始めた」と言っています。例えば今日も sahi.com から次のような記事が配信されていました。

三重県伊勢市の公用車を傷つけたとして、伊勢署は22日、住所不定、無職A容疑者(36)を器物損壊容疑で逮捕した、と発表した。A容疑者は「悪さをすれば逮捕され、食事にありつけると思った」と供述していると同署は説明している。(asahi.com 12/22 付記事より:ただし容疑者名は当方の判断で伏せました。引用元の記事では実名で報道されています)
36歳では,生活保護を受けようとしても何か特別な事情でもない限り,「若いんだから働け」と追い返されるのは目に見えています。「食事にありつけるから」という理由で罪を犯した者に刑罰の名のもとに食事を与えては,犯罪はなくならない,というよりむしろ犯罪を助長するだけでしょう。そうは言っても,釈放されても仕事がなければまた戻ってくるのは目に見えています。釈放された受刑者の面倒を見るのは,結局民間の保護司さんの仕事になりますが,これは実に苦労の多い,本当に頭の下がる仕事です。

それにしてもシャバよりムショの方が暮らしやすい,というのではまさに世も末です。

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2008.06.16

ハーグ子奪取条約批准への動き

日弁連の6月13日付「日弁連 - 国連人権理事会本会議におけるUPR審査に対する日本政府の対応についての日弁連コメント」によると,日本政府は,国連人権理事会の勧告を受けて,ハーグ子奪取条約の批准を行う旨の表明をしたとのこと。
いずれ日本が上記ハーグ条約を批准する日が来そうです。
さてそうなると,国際離婚の破綻に伴って子を連れ帰った場合,それが親権者の権利を侵害したと見做されるときには子を元の居住国に戻す手続が定められることになるはずです。この場合「親権者の権利」と「子の福祉」とでは,文句なく後者が優先すると私は思っていますが,果たしてどうなるでしょうか?

婚姻の破綻に伴って子を国に連れて帰るのは,みなそれぞれの事情のもとで思い詰めた結果であることが多く,単純に子どもを連れ帰ったことをもってして「奪取」「誘拐」などとは非難できないケースが大半です。

ハーグ子奪取条約の批准と同時に,弱者である子ども・女性の保護を徹底すべきであり,そうでなければむしろ批准しない方がいいくらいだと私は考えています。

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2008.06.13

国際離婚の管轄に関する EU の新規則案

asahi.com の記事によれば,EU では域内の国際離婚の裁判管轄についての新規則案が採択される見通しとのこと。

現在は大別して2人の出身国、現居住国、主に結婚生活を送った国——のいずれかの離婚法が適用され、国籍が違う夫婦が離婚するとき「どこに申し立てすべきかわからない」「時間と手間が予測できない」などの不満が出ていた。
新規則案は「2人が合意した国の法律」を原則に、合意がない場合は「2人に最も関係のある国」の法律を用いることにした。

日本の裁判所が採っている被告住所地主義を採らず,EU の新規則案では,合意管轄と密接関係地の管轄権を認めている点が注目されます。実は当事務所でも国際離婚の相談はここ1,2年で急激に増えています。昭和39年の最高裁判例以来,被告住所地主義(被告の住所地の国に国際裁判管轄がある)が採用されてきましたが,当時は国際離婚といっても日本人と在日朝鮮人との離婚が大多数であったでしょうが,今は全く事情が違っています。当事務所でも欧州,米国やもちろん,中東,アジア・大洋州諸国など,実にさまざまな国籍の方々に関する相談があります。
これからの日本での国際離婚の実務の動向を考える上でも,EU の新規則案は注目に値すると思います。

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2008.06.04

国籍法違憲判決

本日,国籍法3条の規定について,最高裁は違憲の判断を下したとのことです(参照:「婚外子 国籍法規定は違憲 国に法改正迫る 最高裁大法廷判決」MSN産経ニュース)。
詳細は判決文を見て機会があれば論評しますが,そもそも国籍法2条は出生の時に父又は母が日本国民である,あるいは出生前に死亡した父が死亡時に日本国民であれば,子は出生により当然に日本国籍を取得する(血統主義)としている以上,本来であれば,出生後に父が認知して父子関係が生じた時には,出生時に遡って認知の効力は及ぶ(民法784条)のですから,子は,当然日本国籍を取得することになるはずであって,それにも関わらず国籍法3条が,準正子について国籍取得の届出を要求していることはそれ自体,血統主義の原則から大きく外れたものであったと言えます。(その意味で,今回の違憲判決を受けて国籍法3条を削除すれば,法改正としてはそれで十分なのではないかと私は思っていますが。)
さて,今回の判断により日本国籍を認められる人々は少なくはないはずですが,それらの方々の言語や民族文化を十分尊重しつつ,日本社会に受け入れる体制を整えていくことも,今後重要になっていくでしょう。

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2008.04.17

表現の処罰と表現手段の処罰

立川ポスティング事件の最高裁判決が裁判所のホームページに掲載されています。

本件では,表現そのものを処罰することの憲法適合性が問われているのではなく,表現の手段すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に管理権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われている
という判断が,有罪判決を導く大前提とされているようです。
しかし問題は,表現内容によって取締の対象になるものとならないものが歴然として存在しているという事実であって,最高裁判所はこのことから目を背けました。
表現の自由は表現の手段なしには成立し得ないはずであり,表現の手段を保障することこそが,表現の自由の要なのではないでしょうか。

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2007.11.27

NPJ

日頃マスメディアばかり頼りにしていたのではわからない,さまざまな裁判が取り上げられているようです。ブックマークとして書き留めておきます。

NPJ News for the People in Japan

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日本人女性と婚姻したレバノン人に在留特別許可が認められました

ご奉告が遅くなりましたが,前回の記事(9月30日付)でご紹介した,日本人女性と婚姻したレバノン人の在留特別許可申請事件で,先週末,ようやく在留特別許可が認められました。
皆さまからたくさんのご署名やご支援をいただき,ありがとうございました。

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2007.09.20

レバノン人男性の在留特別許可を求める署名のお願い

当事務所では現在,日本人女性と婚姻したレバノン人男性の在留特別許可を求める署名を受け付けております。この件については,9月21日付(No.671) 「週間金曜日」の金曜アンテナ欄に掲載されております。
当事務所は,これまで退去強制処分の取り消しを求めて訴訟を行ってきましたが,裁判所は二人の間には「真摯な愛情」がある,とまでは認定したものの,結論としては処分取消には至らず,残念ながら敗訴しました。
しかし,ご承知のように,長い間戦乱の続くレバノンは,到底婚姻生活を送るにふさわしい場所ではありません。そればかりでなく,最近,妻の日本人女性が妊娠していることがわかりました。彼を強制退去させることが,ご夫婦はもちろん,近い将来出生する子の福祉に著しく反する非人道的なものであることはもはや疑いありません。
詳しくは,前記の週間金曜日記事をご覧ください。署名用紙は当事務所に備え付けておりますので,ご連絡いただければお渡しいたします。

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2007.06.22

仮差押えしなかったのはなぜなのか?

判決直前に,債務者所有物件の売買が判明して大騒ぎという例の問題ですが,何を勘違いしたのか,一部のマスコミ関係者がコメントを求めてきたりしたので,この問題についての一般的な感想を。

もとはといえば,そんなことが可能だったのは,債権者が仮差押えもしないままで訴訟提起したからであって,登記が戻ったのでそういう問題にこそ発展しませんでしたが,もしも登記が戻されなかったとしたら,債権者側の代理人は仮差押えを怠ったことそれ自体が弁護過誤であると言われても文句は言えなかったでしょう。そもそも整理回収機構が,債務者が無担保の不動産を所有していることを知りながら,その仮差押えをしないままで訴訟提起をしたという案件がこれ以外に果たしてあったのでしょうか?
この件については,少なくとも訴訟が起こされた当時には,債権者側としても,例の不動産の強制執行以外の方法で債権回収を図るということが,念頭にあったのかも知れません。
私に言わせれば,訴訟提起に先立って仮差押えをしないでおく,ということ自体,かなり勇気ある決断だったというべきか,もしくは債務者側とのなにがしかの信頼関係に基づいた決断であったような気がしてならないのですが。

(7月3日 追記)
こちらの記事に,債務者が官邸側と和解条件を協議していたことを示すメモが押収されている,と書かれています。
一部マスコミの論調には,今回,詐欺罪で立件されたことを疑問視する向きもあるようですが,上記のメモの内容が,官邸にとって好ましくないものだったとすれば,メモの存在を明らかにしないために,今回のような形の立件にならざるを得なかったのかも知れません。もちろんこれはあくまでも推測でしかありません。

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2007.05.30

捜査の秘密

検察庁で行われている最中の捜査に関する事項というのは,秘中の秘なのではないでしょうか?ましてやそれが特捜事件だとしたらなおさらです。それなのにどうして特定の人間に対する事情聴取があったとか,なかったとか,あるいは予定されていたとかそうでないとかを,第三者が知ることができ,また,それを公表することまでできるのか?

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2006.08.28

政党ビラ配布と住居侵入罪の成否

本日のニュースで伝えられているところによると,東京地裁は政党ビラのマンション内配布行為が住居侵入罪に該当するとして起訴された事件について,無罪判決を下した模様。詳細は不明ですが,住居侵入罪の構成要件に該当しない行為と判断したとみられます。判決文を見ていないのではっきりとは言えませんが,報道されている内容をみる限りでは,2004年12月の八王子地裁判決よりさらに踏み込んだ内容と言えるかも知れません。

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2006.05.11

入管法改正案について

海渡雄一弁護士による,入管法改正案についての論考が出ています。

便利だけですまないIC旅券:入管法改正案の問題点(),(

日米合同での,出入国情報一元管理への危惧が表明されています。ご一読をお勧めします。

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2006.03.30

東京地裁にて国籍法違憲判決出る

先日の東京高裁の判決にも関わらず,再び地裁レベルで婚外子にも日本国籍を認める判決が出ました。

婚外子に日本国籍与えないのは「憲法違反」 フィリピン人の母持つ子の訴え全面勝訴 東京地裁判決(日刊ベリタ
認知差別 国籍法は違憲 東京地裁判決(東京新聞

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2006.02.28

東京高裁,外国籍女性の婚外子について,国籍を認めず

東京高裁は,本日,フィリピン国籍女性と日本人男性との間の婚外子が日本国籍を取得できるかどうかについて,これを否定する判断を示したそうです(時事ドットコム記事

きわめて遺憾なことと言わなければなりません。国籍法は出生当時,父又は母が日本人であれば,子は日本国籍を取得すると規定しています。未婚の父は父でない,という理屈ですが,未婚であろうとなかろうと父には父としての責任があるはず。子供に冷たい社会に未来はありません。

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2006.02.06

罰則強化は万能ではない

個人情報漏えい事件を斬る(28): 「個人情報漏洩罪」の新設で,従業者の不注意は防げるか?(nikkei IT Pro より)
詳細はリンク先をご覧いただくとして,何でも罰則を強化すれば良いという安易な立法態度では,何も解決することはできません。すべての結果には原因があるわけですから,その原因を取り除く,ということが重要なわけです。罰則は,起こった結果に対して発動されるものである以上,原因を取り除く防止策にはなり得ない,ということは,そんなに難しい理屈ではないと思うのですが。

なお,この件について,日弁連の意見書(2005年5月6日)はこちらです。

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2005.11.18

公務執行妨害容疑の僧侶,釈放される

ビラ配り中に公務執行妨害容疑で沖縄署に逮捕された69歳の僧侶が,昨日釈放されています。

「木津さん19日ぶり釈放 公務執行妨害容疑を不起訴」(琉球新報 11月18日付)

ところで,公務執行妨害罪が成立するためには,「暴行又は脅迫」を加えることが要件とされています(刑法95条)。
69歳の僧侶がおこなったとされた「暴行又は脅迫」って,一体どんなものだったんでしょうか?
ちなみに不起訴記録は非公開の扱いです。

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2005.10.26

韓国・台湾ハンセン病補償訴訟

ご承知のように,韓国,台湾の旧植民地に存在するハンセン病施設に入所させられた原告らがハンセン病補償法にもとづく補償を求めた事件で,東京地裁の判断はまっぷたつに分かれました。勝訴した台湾訴訟の原告らは,国に対し控訴を断念するよう働きかける一方,韓国訴訟の原告団は直ちに控訴しています。

 判決が異なったのは、ひとえに両訴訟を審理した裁判長の判断が違ったからだ。台湾訴訟で菅野博之裁判長は「補償法は広く入所者を救済するのが目的で、対象施設を限定していない」と広義に解釈した。

 これに対し韓国訴訟の鶴岡稔彦裁判長は「立法の際の国会審議で、韓国と台湾の療養所はほとんど議論されておらず、補償法は国外を想定していない」と判断した。同時に「韓国と台湾の入所者への対応は将来の課題とすべきだ」と述べ、事実上、法律の不備を指摘している。(東京新聞10/26付より)

台湾訴訟を含めて,舞台が高等裁判所に移るのはほぼ確実とみられますが,被害者らの年齢(平均年齢は80歳近い)を考えると,救済を先延ばしにすること自体,たいへん酷なことではないでしょうか。
行政,司法ともに早期解決を目指すべき案件と思います。

 参考記事(韓国人元ハンセン病患者 証言過酷な半生(朝日新聞)

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2005.09.30

国民投票法案についての東京弁護士会長声明(9月20日)

やや遅くなりましたが,9月20日付で国民投票法案についての東京弁護士会会長声明が出ていますので,興味のある方はリンク先をご覧ください。

東京弁護士会会長声明(2005年9月20日)

第二東京弁護士会会長声明
(2005年4月8日)

日弁連意見書(2005年2月18日)

<追記>
産経では,今国会提出は見送りという記事が出ているようです。

 自民、公明両党は当初、民主党の賛同を得られるとみて、今国会に国民投票法案を提出する方針だったが、民主党側が「議論が整理できていない課題も多い。慎重に議論を進めるべきだ」と主張、折り合いがつかなかったため今国会提出を断念。来年の通常国会に提出する方針に変更した。

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2005.08.26

「裁判コピー代」高すぎる

朝日新聞8月25日付より

刑事記録は時に1千枚を超える。コピー代が10万円を超えた例もあり、犯罪被害者にとって大きな負担となっている。

犯罪被害者に対してもそうですが,記録の謄写費用というのは,前々から被告人にとっても大きな負担だったわけですし,民事裁判でも時には大きな問題になるわけです。刑事事件だけでなく,例えば医療訴訟などでは,膨大なカルテが証拠として提出され,それだけでも段ボール箱何箱分にもなってしまいます。

 犯罪被害者側は政府や裁判所に値下げを求めてきたが、最高裁は「料金はコピーを請け負う側が独自に決めるもので関与できない」との立場から、対応を司法協会や弁護士会に委ねてきた。
と書かれていますが,裁判所にも,裁判を受ける権利に関わる重要な問題としてとして捉えてもらいたいものです。 法律扶助や訴訟救助の拡充というかたちで,裁判を受ける権利を実質化していくことが望まれます。

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2005.07.08

誤認逮捕・起訴

下野新聞のページに興味深い連載があります。

誤認逮捕・起訴

まさに有罪と無罪は紙一重でした。

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2005.05.30

住基ネット上の個人情報コントロール権

住基ネット訴訟:個人情報削除認める、全国初 金沢地裁(毎日新聞より)

この春施行された個人情報保護法は,個人情報を保有する個人情報取扱事業者に対し,個人情報の訂正削除を求める権利を認めていますが,行政の保有する個人情報についても,当然,個人が自らの個人情報を管理する権利が認められなければなりません(行政個人情報保護法,独立行政法人個人情報保護法に規定あり)。
従来の最高裁判例をみると,少なくとも表現の自由との関係においてはプライバシー権を重視する判例が多かったといえますが,「公共の福祉」との関連においては,「公共の福祉」を優先させてプライバシー権の保護を後退させる判断も少なくはなかったようです。
しかし,個人情報保護法は,民間事業者を行政と同列に取り扱って,民間事業者の行為をも一般に規制の対象としました。このことを裏返せば,個人情報の保護という観点において,従来のような一般的抽象的な「公共の福祉」論はもはや成り立たない,とも言えそうです。

さて,今後金沢地裁に続く判断が出るかどうか。

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2005.05.16

諫早の水の色

諫早干拓抗告審決定要旨(中国新聞より)

先日,長崎に行きましたが,大村の長崎空港から離陸してしばらくすると,飛行機から諫早湾を望むことができます。湾を二つに仕切る堤防の内と外では,まるで色が違うのが飛行機の窓越しでもよくわかります。堤防の内側は,もはや海の色ではない,土の色です。
今次の高裁決定もよく見ると,事業の費用対効果という側面には疑問を表明している,とも読めるようですが・・・。

高裁決定を目の当たりにして,改めて原審佐賀地裁裁判官の勇気に敬意を表せざるを得ません。

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2005.04.13

非嫡出子の日本国籍を認める判決

非嫡出子への区別は違憲 フィリピン人母の男児に国籍
婚姻関係のない,外国人と日本人の間に生まれた子供たちの国籍に関する画期的な判決です。またこれは非嫡出子を抱える外国人女性の在留資格にも結びつくという点でも大きな意味を持ちます。
 日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれたフィリピン国籍の子ども九人が、両親が結婚していないことで日本国籍を取得できないのは不合理な差別で違憲だとして十二日、日本国籍の確認を求める訴えを東京地裁に起こした。(中日新聞4月13日付

おそらく本日の判決を見越しての訴訟提起と思われますが,同様の事例はたくさんあるはず。最高裁で違憲判決が出ないうちは,法務省の対応は変わらないでしょうから,今後同種の訴訟が増えると思われます。

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2005.03.07

門の外に侵入しました!

門の外でも「住居侵入」とはこれ如何に?(百万人署名運動のトップページ
さすがに勾留請求が却下されたようですが,これはあまりにも露骨ですね。

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2005.02.23

偽造カードで引き出されるのは誰の金?

最近話題になっている偽造キャッシュカードを用いた預金の引き落とし。
ところで,偽造カードで引き落とされるのは,一体誰のお金なんでしょう?一般には預金者が被害を受けているので銀行が被害補償すべき,と言われているようであり,偽造カードで真の預金者の預金が引き出されている,と考えられているようです。
しかし,民法の一般原則から言えば,Bという人物がAと名乗って契約をして,Aにその効果が生じるのは,BがAの代理人である場合,あるいはそう見られても仕方ない場合(AがBに白紙委任状を与えていたなど)に限られるはずです。したがって,偽造カードによる預金引き落としは,犯人が預金者の預金を盗んだのではなく,偽造カードを用いて銀行に本人であると誤信させてATMから現金を騙し取った詐欺罪になるというのが,刑法上の定説です。
そうすると偽造カードで引き出されたお金は銀行のお金であって真の預金者の預金ではないはず。にもかかわらず銀行が約款を盾にして預金者に被害を押し付けて,犯罪者の追求を怠ってきたところに,大きな問題があります。

参考記事(毎日新聞2月23日付

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2005.02.18

二人の真犯人?

朝日新聞2月18日付記事から

 栃木県警宇都宮東署が、宇都宮市内の無職の男性(53)を強盗容疑で誤認逮捕し、宇都宮地検もそのまま起訴していたことが18日、わかった。男性は当初、起訴事実を認めていたが、昨年末の公判で一転して否認。別の強盗事件で先月逮捕された市内に住む組立工の男(56)が犯行を自供し、県警は男を今月17日に強盗の疑いで書類送検した。

 無職の男性は昨年8月、宇都宮市内で女子中学生に暴行した疑いで逮捕された。県警はその後、4月と5月に市内のケーキ店とスーパーで起きた強盗事件の容疑者である疑いを強め、再逮捕して追送検した。

 県警によると、現場に残された足跡は一致しなかったが、男性の写真を見た被害者が「似ている」と話したという。さらに、実況見分の際に男性が「ここから建物に入った」と説明したことなどが調べと一致したという。宇都宮地検は起訴を取り下げておらず、公判の中で無罪を明らかにしていくとみられる。

報道後段の「男性」とはどちらをさすのかよくわかりませんが,おそらくは誤認逮捕された方なのでしょう。いわゆる「面割り」証言が必ずしも十分信用できないことは,よく言われることです。なぜ足跡の不一致という客観的事実に反してまで逮捕,起訴したのか?そして,なぜ彼は起訴後も事実を認めていたのか?実況見分の際の説明が調べと一致した,といいますが,警官にとりかこまれ,手錠をはめて腰縄つけてする実況見分で警察の把握している事実と違う説明ができるはずがないでしょう。

真犯人が自供したから良かったものの,もしもそうでなかったら果たして彼は無罪を勝ち取れるでしょうか?

冤罪事件はごく身近なところで起きている,という話。

(追加)読売の記事が詳しいようです。これによるとすでに検察側は懲役7年の求刑をしていたとのこと。

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2005.02.09

追徴金と被害者救済(2)

前回のエントリーの後に,asahi.comに記事が出ていました。

「犯罪収益被害者に」実行されぬ制度の不備 五菱会事件

追徴しないことに不満があるのはもちろんですが,犯罪被害者に対する給付制度に不備があることこそ大きな問題なのではないでしょうか。
現行の犯罪被害者等給付金制度では,財産犯罪の被害者への公的給付はありません。しかし,本当にそれで良いのか?今回のように犯罪者が多額の資産を保有している例は極めてまれなケースでしかありません。犯罪者への追徴や懲罰的賠償を論ずるのなら,これとセットで犯罪被害者に対する公的援助を充実させて欲しいものです。

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追徴金と被害者救済

ヤミ金融:梶山被告に懲役7年 追徴金は認めず

 指定暴力団山口組五菱会(二代目美尾組に改称)の組織的ヤミ金融事件で、出資法違反(高金利)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)に問われた同会系貸金業総括経営者で「ヤミ金の帝王」と呼ばれた梶山進被告(55)の判決公判が9日、東京地裁であった。飯田喜信裁判長は求刑通り懲役7年、罰金3000万円を言い渡したが、併せて求刑されていた没収170万ドル、追徴金約51億円は「被害者救済に充てるべきだ」として認めなかった。(毎日新聞 2月9日付

追徴金を認めなかった判決には,批判もあるようですが,では,被害者の被害回復,損害賠償請求はどうするのでしょうか。追徴金は国庫に帰属しますが,国庫負担で被害回復が図られるわけではないのです。追徴金を課すべきとする検察側は,被害回復の点をどう考えているでしょう?
ただ,ヤミ金のトップがまさか契約書に名前を出しているわけでもありませんし,下部組織と上部組織のつながりも隠蔽されているはず。一般の民事訴訟で「ヤミ金の帝王」をいきなり訴えても,立証は大変です。裁判所も被害者救済を言うならそのあたりまで十分気を配ってもらいたいものです。

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2005.01.31

拘置所内の医療水準

最近,拘置所内の医療に関する判決がいくつか出ています。

 東京拘置所内で脳こうそくと診断された際に適切な治療を受けられず重い障害を負ったとして、住居侵入罪で公判中の被告男性(55)と家族が国に賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京高裁であった。岩井俊裁判長は、120万円の賠償を命じた1審・東京地裁判決(04年1月)を取り消し、男性側逆転敗訴を言い渡した。1審は、30時間以上転院させず拘置所内に留め置いた点を違法としたが、岩井裁判長は「拘置所内の医療施設は専門病院によるきめ細かな看護体制に及ばないが、生命の尊厳を脅かすほど粗雑な診療ともいえない」と指摘した。(毎日新聞1月18日付

 傷害致死罪で実刑判決を受け、控訴していた男性(当時45歳)が2002年、東京拘置所で自殺したのは、適切な精神薬が与えられなかったためとして、男性の母親が国に1億4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。

 瀬木比呂志裁判長は「男性の求めた投薬を与えなかったのは、拘置所の医師の裁量を逸脱し、違法だ」と述べ、慰謝料など約3055万円の支払いを命じた。

 判決は、男性が求めていた精神薬を東京拘置所が与えなかったことから、「精神的に著しく不安な状態に陥り自殺に至った」と指摘。さらに、自殺に使用したぞうきんを事前に撤去しなかったり、発見時に人工呼吸をしなかったりした過失があると認定した。(毎日新聞1月31日付


拘置所の医療水準は,一般の病院と比べるとかなりの隔たりがあるようです。しかもカルテの開示はおろか,診療にあたる医師の名前すら知らされません。
もともと拘置所に勾留される被疑者・被告人は無罪と推定されるはずなのですから,ぞんざいな扱いを正当化することはできないのです。

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