2009.10.08
今朝は台風もそうですが,Winny 事件の逆転無罪が大きな話題を呼んでいるようですので,雑感を少々。
私は,詳しい技術も内容も知らない門外漢ですが,本日の高裁判決は刑法理論をすっきりと筋を通しているように見え,好印象です。そもそも刑法は,すでに起きてしまった犯罪という結果に対して,個別に罰を科して犯罪者の矯正(再犯防止)を目指すもの。一罰百戒という言葉もあり,いわゆる一般予防(検察官は好きですね。論告でよく聞きます。)ということも良く言われますが,それを強調すると刑事法廷が立法の場に踏み込むことになってしまう。新しい類型の行為を,従来から存在する犯罪の類型に組み入れて裁くことで一罰百戒,を目的とした強制捜査( Winny 事件に限らずときどき見かけるのですが)は,実は立法権の侵害であり,民主主義とは相容れないということを,捜査機関は肝に銘じてもらいたい。
そういう意味では,著作権侵害を防ぐということは無論大切だけれども,その先鋒を警察などの捜査機関に委ねるのは,刑法の目的を超えるだろうし,刑事手続による事後的個別的な刑罰の執行が,著作権の保護のために十分有効であるとも思えません。
いずれにせよ,ご本人も弁護団の諸氏もみごとな奮闘でした。心からの敬意を表します。
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2009.08.17
このところ,「情報流通促進計画」で,具体的な事件についての問題提起がなされていたり,前田朗さんが,Blog でこのところヘイトクライムに関する論述を連載されていたりする。先日は,この問題に関する集会も開催されていた(参考:日刊ベリタ : 記事 : 「ヘイトスピーチは許せない。『行動する保守!?』とどう向き合うか。」 当事者を交えた活発な意見交換も)が,日本国憲法の下でも,このヘイト・スピーチというものと表現の自由との関わりを議論しなければならない時が来ているように思う。
大事な問題ではあるが,ここではいくつかの論点を指摘するにとどめておきたい。
「ヘイト・スピーチ」をどう定義するか。
個別の問題についてさまざまな意見や立場はあり得るし,それが民主主義の基礎である。ある言論活動がヘイト・スピーチであるかどうかを考える場合,異なる意見や存在を許容するかどうか,がひとつの分水嶺と思う。平穏な集会を暴力的に妨害する,あるいは行政当局に圧力をかけて会場使用を止めさせたり,後援を取り消させたりするなどは,もはや他者の言論の妨害であって,表現の自由の範疇を逸脱する行為であり,現行憲法,刑法のもとでも十分犯罪が成立し得る。ひとつの私案としては,異なる意見(あるいは政治的立場,民族,人種など)に対し,寛容な態度を取っているのかどうか,をひとつのメルクマールとすべきではないだろうか。
「ヘイト」に内在する特定対象者への攻撃性
上記が,客観的態様からの定義とすれば,「ヘイト・スピーチ」の内容に着目した定義も行う必要がある。これは言論の内容の問題になるので慎重に検討しなければならないが,「ヘイト (Hate : 憎しみ,嫌悪)」という概念自体が,その対象たる人々に対する攻撃性を内在していることに注目しなければならないと思う。したがって「ヘイト・スピーチ」は単なる平穏かつ一般的な意見表明に留まらず,特定対象者に対するあからさまな攻撃的行動を指向する傾向を持つのである。
ヘイト・スピーチに対する警察・行政当局のあり方
残念ながら多くの場合,ヘイト・スピーチに対し,警察当局はおそろしく寛大であり,行政当局は極めて小心である。これがまたヘイト・スピーチを唱える者たちに標的とした集会の中止や自治体による後援の撤回などの「成果」を与え,一層彼らを助長している。これは民事介入暴力の問題に良く似ている。そう,ヘイト・スピーチが暴力を伴うとすれば,それはまさしく民事介入暴力といって良い。
ヘイト・スピーチに直面した人々は,巻き込まれて共犯化する
いじめを見て見ぬふりをする子どもが共犯者として巻き込まれていくように,ヘイト・スピーチは,直面した人々をいやおうなく共犯者として巻き込む圧力を持つ。言論の自由の仮面をつけて言論の自由を抹殺してゆくのである。
参考:
前田朗Blog2009.8の過去記事情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)関連エントリ
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2009.07.28
婚姻中の女性の子は,真の父親が誰であろうとも,民法772条のいわゆる嫡出推定の規定があるために,夫の子として記載されます。夫の戸籍に記載されないようにするには,健康保険に加入できないなど,さまざまな不利益を覚悟のうえで,あえて出生届を行わない以外に方法がないのが現状です。
ところが最近扱った偽装結婚案件で,捜査当局が,子が真実の父でない戸籍上の夫の戸籍に記載されたことをもってして,「公正証書原本等不実記載」だなどと言って捜査活動を行い,子どもの血液採取までしたのを目の当たりにして,さすがに驚いてしまった。つまり,子が戸籍上の夫の戸籍に入ったのは虚偽の出生届のゆえだ,というのが捜査当局の言い分なのですが,それはどう考えても無理がある。出生届に戸籍上の父以外の男性の名前を書いて窓口に持っていってもおそらくは父親欄を白紙にすることを求められるのが関の山だろうし,がんばって真実の父の名前を記載したまま出生届を提出しても,やはり戸籍事務としては戸籍上の夫の戸籍にいったんは記載せざるを得ない。
つまり「虚偽」の状態が生じるのは民法772条の推定規定のためであって,出生届の記載が虚偽であったからではない。ひいては,戸籍上の記載は,単に嫡出の推定が働いていることを意味するに過ぎない,と考えれば,そもそもそれが「虚偽」とも言えない。
驚いて私が検察庁に抗議して約2週間後,案の定「立件は見送る」との連絡があったのでホッとしているのですが,素知らぬふりをしてそのまま起訴させて,後から「無罪判決を取った!」と威張る方法もあったのかな,などと少しばかり後悔している次第です。
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2009.07.26
昨年から当事務所で扱っていた標記の案件は,養育状況も全く問題がなく,比較的簡単と思われたのですが,思わずてこずってしまい,先日,ようやく一件落着の運びとなりました。
なぜそんなにてこずったのか,というと,ひとつは,フィリピンの養子縁組法は,しばらく前に改正され,日本の特別養子のように実親との法的関係を残さない完全養子が原則になっているのですが,裁判所で比較的権威がある渉外養子に関する研究文献に,実はその改正法が反映されていなかったのです(!!)。
そして,もうひとつ,実はフィリピン国籍の子を特別養子に迎えた過去の事例が,どうも見当たらないらしいのです。
最終的には,裁判官の疑問点について当事務所からひとつひとつ関連資料を提示し疑問を解いていく中でめでたく許可審判が出たのですが,裁判所は今一つ自信が持てないのか,今のところ審判は公にされていないようです。
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2008.12.22
最近,私は,機会がある毎に「福祉と刑罰が逆転し始めた」と言っています。例えば今日も sahi.com から次のような記事が配信されていました。
三重県伊勢市の公用車を傷つけたとして、伊勢署は22日、住所不定、無職A容疑者(36)を器物損壊容疑で逮捕した、と発表した。A容疑者は「悪さをすれば逮捕され、食事にありつけると思った」と供述していると同署は説明している。(asahi.com 12/22 付記事より:ただし容疑者名は当方の判断で伏せました。引用元の記事では実名で報道されています)
36歳では,生活保護を受けようとしても何か特別な事情でもない限り,「若いんだから働け」と追い返されるのは目に見えています。「食事にありつけるから」という理由で罪を犯した者に刑罰の名のもとに食事を与えては,犯罪はなくならない,というよりむしろ犯罪を助長するだけでしょう。そうは言っても,釈放されても仕事がなければまた戻ってくるのは目に見えています。釈放された受刑者の面倒を見るのは,結局民間の保護司さんの仕事になりますが,これは実に苦労の多い,本当に頭の下がる仕事です。
それにしてもシャバよりムショの方が暮らしやすい,というのではまさに世も末です。
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2008.06.16
日弁連の6月13日付「日弁連 - 国連人権理事会本会議におけるUPR審査に対する日本政府の対応についての日弁連コメント」によると,日本政府は,国連人権理事会の勧告を受けて,ハーグ子奪取条約の批准を行う旨の表明をしたとのこと。
いずれ日本が上記ハーグ条約を批准する日が来そうです。
さてそうなると,国際離婚の破綻に伴って子を連れ帰った場合,それが親権者の権利を侵害したと見做されるときには子を元の居住国に戻す手続が定められることになるはずです。この場合「親権者の権利」と「子の福祉」とでは,文句なく後者が優先すると私は思っていますが,果たしてどうなるでしょうか?
婚姻の破綻に伴って子を国に連れて帰るのは,みなそれぞれの事情のもとで思い詰めた結果であることが多く,単純に子どもを連れ帰ったことをもってして「奪取」「誘拐」などとは非難できないケースが大半です。
ハーグ子奪取条約の批准と同時に,弱者である子ども・女性の保護を徹底すべきであり,そうでなければむしろ批准しない方がいいくらいだと私は考えています。
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最高裁の違憲判決の後,14日までの間に,婚外子の国籍取得届出は3件ほどあった,という報道がなされているようです(「婚外子」の国籍取得、最高裁判決後に届け出が3件(読売新聞) - Yahoo!ニュース)。
当事務所では6月4日の違憲判決の直前に,女性の待婚期間中(いわゆる300日規定)のため,日本での婚姻届ができず,子が前婚の夫の子の嫡出子推定を受けてしまうケースを扱いました。そして,わずか10日間だけ区切って数を公表することにどんな意味があるのか,という疑問もあります。
それと同時に,届出は住所を管轄する「法務局」に提出する必要がありますが,法務局なんてどこにあるかさえ知らない,という人もあるのでは?また,婚外子を生物学上の父に認知してもらうことが難しいケースもあるでしょうから,その場合には認知を求める手続が必要になります。いずれにせよ,認知による国籍取得には20歳未満という条件があります。なるべく早く,国籍問題に詳しい専門家にご相談することをお勧めします。
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2008.06.13
asahi.com の記事によれば,EU では域内の国際離婚の裁判管轄についての新規則案が採択される見通しとのこと。
現在は大別して2人の出身国、現居住国、主に結婚生活を送った国——のいずれかの離婚法が適用され、国籍が違う夫婦が離婚するとき「どこに申し立てすべきかわからない」「時間と手間が予測できない」などの不満が出ていた。
新規則案は「2人が合意した国の法律」を原則に、合意がない場合は「2人に最も関係のある国」の法律を用いることにした。
日本の裁判所が採っている被告住所地主義を採らず,EU の新規則案では,合意管轄と密接関係地の管轄権を認めている点が注目されます。実は当事務所でも国際離婚の相談はここ1,2年で急激に増えています。昭和39年の最高裁判例以来,被告住所地主義(被告の住所地の国に国際裁判管轄がある)が採用されてきましたが,当時は国際離婚といっても日本人と在日朝鮮人との離婚が大多数であったでしょうが,今は全く事情が違っています。当事務所でも欧州,米国やもちろん,中東,アジア・大洋州諸国など,実にさまざまな国籍の方々に関する相談があります。
これからの日本での国際離婚の実務の動向を考える上でも,EU の新規則案は注目に値すると思います。
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2008.06.04
本日,国籍法3条の規定について,最高裁は違憲の判断を下したとのことです(参照:「婚外子 国籍法規定は違憲 国に法改正迫る 最高裁大法廷判決」MSN産経ニュース)。
詳細は判決文を見て機会があれば論評しますが,そもそも国籍法2条は出生の時に父又は母が日本国民である,あるいは出生前に死亡した父が死亡時に日本国民であれば,子は出生により当然に日本国籍を取得する(血統主義)としている以上,本来であれば,出生後に父が認知して父子関係が生じた時には,出生時に遡って認知の効力は及ぶ(民法784条)のですから,子は,当然日本国籍を取得することになるはずであって,それにも関わらず国籍法3条が,準正子について国籍取得の届出を要求していることはそれ自体,血統主義の原則から大きく外れたものであったと言えます。(その意味で,今回の違憲判決を受けて国籍法3条を削除すれば,法改正としてはそれで十分なのではないかと私は思っていますが。)
さて,今回の判断により日本国籍を認められる人々は少なくはないはずですが,それらの方々の言語や民族文化を十分尊重しつつ,日本社会に受け入れる体制を整えていくことも,今後重要になっていくでしょう。
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2008.05.16
国境をまたぐ訴訟では,必ず文書の翻訳が必要になります。しかし翻訳に必要な費用は,決してバカにならない金額です。法廷通訳であれば裁判所が通訳人を選任するのでその費用は訴訟費用に計上され,資力のない当事者は訴訟救助を受けることもできます。ところが書面の翻訳は,当事者が翻訳文を独自に作成して裁判所に提出する扱いになっているので,当事者の負担となり,訴訟救助の対象にもならない。
従来は渉外事件は国際的にビジネスを展開する大企業の専売特許のように思われてきた節があって,もちろんそういう資力のある当事者なら数十万の翻訳料など大した金額ではないでしょう。しかし例えば海外で夫から暴力を受けて命からがら逃げてきた,というケースの離婚請求だって立派な渉外家事事件です。そんなケースでは翻訳費用をどうしたら良いのか本当に困ることが,多々あります。
そして,訴訟書面の翻訳文の質を高めることは,日本の訴訟手続への国際的信頼を確保するためにも重要です。しかし当事者が提出する翻訳文には,正確性の担保はまったくありません。法廷通訳と同じように,裁判所の選任した翻訳者による訴訟書面の翻訳はできないのでしょうか?
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2008.04.17
在外邦人の国際離婚,という案件を抱えていて,予想外に苦労しています。日本国内で同居中に相手方が行方不明になり,探してみたらいつのまにか本国に帰国していた,というケースなのですが,家庭裁判所であえなく訴状却下の憂き目に遭い,現在控訴中。
在外邦人の離婚訴訟自体,ほとんど例がないようですが,「原告が国外にあるから日本の裁判所には裁判管轄がない」,という判断には釈然としないものを感じますし,そんな判断がまかり通ったのでは在外邦人は日本の裁判所で離婚訴訟をすることができない,ということになりかねません。
昭和39年の最高裁判例(参考記事)以後,離婚訴訟の国際裁判管轄の基準として国籍を基準とする説は影を潜め,住所基準説が通説的地位を占めたようですが,本当にそれでいいのかどうか。
国際家族関係では複数の法秩序にもとづく法律関係が多元的に生じているのですから,我が国の裁判管轄を認めたからといって,他国の裁判管轄権を侵害することにはならないはずです。そういう意味において,国際家族関係においては,財産法的視点で国際裁判管轄を限定する必要性は乏しいと思っています。
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立川ポスティング事件の最高裁判決が裁判所のホームページに掲載されています。
本件では,表現そのものを処罰することの憲法適合性が問われているのではなく,表現の手段すなわちビラの配布のために「人の看守する邸宅」に管理権者の承諾なく立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問われている
という判断が,有罪判決を導く大前提とされているようです。
しかし問題は,表現内容によって取締の対象になるものとならないものが歴然として存在しているという事実であって,最高裁判所はこのことから目を背けました。
表現の自由は表現の手段なしには成立し得ないはずであり,表現の手段を保障することこそが,表現の自由の要なのではないでしょうか。
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2007.11.27
日頃マスメディアばかり頼りにしていたのではわからない,さまざまな裁判が取り上げられているようです。ブックマークとして書き留めておきます。
NPJ News for the People in Japan
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ご奉告が遅くなりましたが,前回の記事(9月30日付)でご紹介した,日本人女性と婚姻したレバノン人の在留特別許可申請事件で,先週末,ようやく在留特別許可が認められました。
皆さまからたくさんのご署名やご支援をいただき,ありがとうございました。
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2007.09.20
当事務所では現在,日本人女性と婚姻したレバノン人男性の在留特別許可を求める署名を受け付けております。この件については,9月21日付(No.671) 「週間金曜日」の金曜アンテナ欄に掲載されております。
当事務所は,これまで退去強制処分の取り消しを求めて訴訟を行ってきましたが,裁判所は二人の間には「真摯な愛情」がある,とまでは認定したものの,結論としては処分取消には至らず,残念ながら敗訴しました。
しかし,ご承知のように,長い間戦乱の続くレバノンは,到底婚姻生活を送るにふさわしい場所ではありません。そればかりでなく,最近,妻の日本人女性が妊娠していることがわかりました。彼を強制退去させることが,ご夫婦はもちろん,近い将来出生する子の福祉に著しく反する非人道的なものであることはもはや疑いありません。
詳しくは,前記の週間金曜日記事をご覧ください。署名用紙は当事務所に備え付けておりますので,ご連絡いただければお渡しいたします。
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2007.09.04
弁護士への懲戒請求が違法となる場合について,最高裁(平成19年4月24日第三小法廷判決)は,
懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合におい て,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことに よりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒 制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求とし
て不法行為を構成すると解するのが相当である
と,訴えの提起が違法となる場合に比べて緩やかな基準,すなわち違法性をより広く認める方向での基準を採用しています。
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2007.03.09
強制退去取り消す逆転判決/「愛情に基づく結婚」指摘
逮捕後の結婚という,きわめて困難な事例で退去強制令書発付を取り消した,大変興味深い例です。ニュースでは触れられていませんが,かなり切羽詰まった状況が生じた事案のようですから,一般化できる判断内容でもないと思われますが,注目すべき判決であることは間違いありません。
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2006.08.28
本日のニュースで伝えられているところによると,東京地裁は政党ビラのマンション内配布行為が住居侵入罪に該当するとして起訴された事件について,無罪判決を下した模様。詳細は不明ですが,住居侵入罪の構成要件に該当しない行為と判断したとみられます。判決文を見ていないのではっきりとは言えませんが,報道されている内容をみる限りでは,2004年12月の八王子地裁判決よりさらに踏み込んだ内容と言えるかも知れません。
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2006.05.11
海渡雄一弁護士による,入管法改正案についての論考が出ています。
便利だけですまないIC旅券:入管法改正案の問題点(上),(下)
日米合同での,出入国情報一元管理への危惧が表明されています。ご一読をお勧めします。
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2006.04.20
外国で結婚生活したが,うまく行かず帰国した方の離婚相談を受けることがあります。
さて,そのような方々の場合,まず,日本の家庭裁判所で調停,裁判をおこして離婚できるのかどうか,が問題となります。
この点について判例(最高裁大法廷昭和39年3月25日判決)は,原則として被告すなわち離婚の相手方の住所地の裁判所に管轄があるとしつつ,「原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合その他これに準ずる場合」には原告すなわち離婚を求める側の住所地の裁判所に管轄があるとしています。
問題は,「その他これに準ずる場合」とは,どんな場合をいうのか,ということですが,種々のファクターを綜合の上判断する以外にはない,ということになります。
たとえば,相手方の本国で結婚していたけれども暴力に耐えかねて帰国したなど,様々なケースが考えられ一概には判断できません。この種のケースでは,土地柄にもよりますが,家裁などで相談してもあまり明確な回答は得られていないように見受けられます。
お悩みの場合にはどうぞ渉外事件に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。
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2006.03.30
先日の東京高裁の判決にも関わらず,再び地裁レベルで婚外子にも日本国籍を認める判決が出ました。
婚外子に日本国籍与えないのは「憲法違反」 フィリピン人の母持つ子の訴え全面勝訴 東京地裁判決(日刊ベリタ)
認知差別 国籍法は違憲 東京地裁判決(東京新聞)
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2006.02.28
東京高裁は,本日,フィリピン国籍女性と日本人男性との間の婚外子が日本国籍を取得できるかどうかについて,これを否定する判断を示したそうです(時事ドットコム記事)
きわめて遺憾なことと言わなければなりません。国籍法は出生当時,父又は母が日本人であれば,子は日本国籍を取得すると規定しています。未婚の父は父でない,という理屈ですが,未婚であろうとなかろうと父には父としての責任があるはず。子供に冷たい社会に未来はありません。
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2006.01.13
いわゆる偽装結婚は無効であり,刑法上,公正証書原本等不実記載罪に該当する,とされています。
しかし偽装だろうが何だろうが戸籍又は外国人登録原票に表示されるわけで,そのように表示されている以上,これを訂正しなければならないわけです。この場合,婚姻無効の判決を求めて裁判によらなければならないのか,それとも離婚手続でも構わないのか。
結論から言うと,実務上はむしろ協議離婚,裁判離婚を問わず離婚手続による場合が多いと思われます。
私の経験からも,裁判所はあまり婚姻無効を認定したがらないようです。なぜなら「偽装」と一口に言っても実際には様々なケースがあるわけで,机上で論じるように無効と有効を線引きできるほど男女関係は簡単なものではない,ということが言えます。
翻って見ると,偽装結婚の違法性が問われた刑事事件でも,本当に違法なのかどうか,微妙なケースというのはあるような気もするわけですが......。
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2005.12.12
9日の東京高裁による逆転有罪判決は,すでにご承知のことと思います。
今回の判決を契機に,この事件以降いくつか発生している政治ビラ配布行為に対する逮捕立件が加速されそうな予感がします。すくなくとも,政治的意見に関わるビラ配布は,明らかに自粛されることのなると思われます。誰だって逮捕されたくはありませんから。しかし,商業チラシの戸別配布は決してなくはならないでしょう。なぜならそれはほとんど逮捕されることがないからです。
マスメディアを介して意見表明できる側に立つなら良いですが,そうでないならどこで意見表明すべきなのでしょうか?
この判決の,言論活動に対する萎縮効果はきわめて明白です。
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2005.11.30
外国籍女性と日本国籍男性の間に生まれた非嫡出子は,胎児認知されていなければ,原則として日本国籍を取得することができません。
国籍法2条1項は,「出生の時に父また母が日本国民であるとき」に子は日本国籍を取得するものと定めていますが,非嫡出子は父がないからこの場合には該当しない,という理屈です。
しかし,処女懐妊でもあるまいし,両親が結婚しているかどうかに関わらず,父がなければ子は生まれません。その点で上記のような解釈は問題があると思います。
しかし,現実の戸籍実務上,父と母が婚姻関係にない子に,日本国籍を取得させるためには,原則として胎児認知をしなければならないわけです。母が他の男性と婚姻関係にある場合には,胎児認知しようとしても,母の夫との間の親子関係不存在を確認する必要が生じ,手続が複雑になります。
いずれにせよ,早急に必要な手続をとることが,新しい命に対する責任です。
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2005.11.18
ビラ配り中に公務執行妨害容疑で沖縄署に逮捕された69歳の僧侶が,昨日釈放されています。
「木津さん19日ぶり釈放 公務執行妨害容疑を不起訴」(琉球新報 11月18日付)
ところで,公務執行妨害罪が成立するためには,「暴行又は脅迫」を加えることが要件とされています(刑法95条)。
69歳の僧侶がおこなったとされた「暴行又は脅迫」って,一体どんなものだったんでしょうか?
ちなみに不起訴記録は非公開の扱いです。
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2005.11.10
しばらく前の話だが,「ある朝,なんだかマスコミが大勢来ていると思ったら,やがて警官がやって来て家宅捜査が始まった」という体験談を耳にした。
なるほどそういえば大掛かりな強制捜査は必ず報道陣が来ていて,その映像がニュースを飾ることが多い。
これはもちろん当局がマスコミに情報を流すからで,事前の情報があるからマスコミが用意周到でやって来るわけだ。ニュースにしてもらうために強制捜査するわけでもないだろうに。
特に事件報道について報道と人権,プライバシーの問題を指摘する声はよく聴く。しかしよく考えると報道には必ず情報源があるわけで,その情報源さんにこそしっかりとした人権感覚を持ってもらいたいものだ。
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2005.10.26
ご承知のように,韓国,台湾の旧植民地に存在するハンセン病施設に入所させられた原告らがハンセン病補償法にもとづく補償を求めた事件で,東京地裁の判断はまっぷたつに分かれました。勝訴した台湾訴訟の原告らは,国に対し控訴を断念するよう働きかける一方,韓国訴訟の原告団は直ちに控訴しています。
判決が異なったのは、ひとえに両訴訟を審理した裁判長の判断が違ったからだ。台湾訴訟で菅野博之裁判長は「補償法は広く入所者を救済するのが目的で、対象施設を限定していない」と広義に解釈した。
これに対し韓国訴訟の鶴岡稔彦裁判長は「立法の際の国会審議で、韓国と台湾の療養所はほとんど議論されておらず、補償法は国外を想定していない」と判断した。同時に「韓国と台湾の入所者への対応は将来の課題とすべきだ」と述べ、事実上、法律の不備を指摘している。(東京新聞10/26付より)
台湾訴訟を含めて,舞台が高等裁判所に移るのはほぼ確実とみられますが,被害者らの年齢(平均年齢は80歳近い)を考えると,救済を先延ばしにすること自体,たいへん酷なことではないでしょうか。
行政,司法ともに早期解決を目指すべき案件と思います。
参考記事(韓国人元ハンセン病患者 証言過酷な半生(朝日新聞))
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2005.10.12
最近,ある刑事事件で,公判廷における証言の信用性を否定し,捜査段階の検察官調書を採用する論拠として,「被告人や傍聴人の前では真実が証言できない」とする判決に出くわした。
別に被告人も傍聴人もこわい人たちでもなんでもない。ごく普通の一般人であり,抽選で傍聴券を配布した結果,傍聴することができた人たちである。
それじゃあ,裁判の公開とは一体何のためなのか,と問わざるを得ない。また,それなら,密室での取り調べなら,人は自己の体験をありのままに話すことができるとでも言うのだろうか?
密室で取り調べて,密室で判決するというのなら,もはや裁判所は要らないのではないか?
公開法廷での証言が,公開されていたゆえに信用できないというのは,もはや裁判所の自己否定というほかはない。
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2005.09.28
10月9日号の Yomiuri Weekly は国際離婚のレポートを載せているので,ご覧になった方も多いと思います。
グローバル化が進んだ結果、当然といえば当然だが、国際結婚が増えている。日本で届け出があった国際結婚の件数は、2003年には3万6000件余と、約 10年前に比べ約3割増えた。しかし、幸せなカップルばかりではない。結婚以上に国際離婚も増え、この10年で倍増する勢いなのだ。
結論から言うと,日本人配偶者が離婚するだけならば,日本の家庭裁判所で手続することでそれほどの問題は生じないはずです(ただし,以前のエントリーで触れたように,日本で婚姻届を出していない場合に,婚姻届を提出しなければ離婚できないなどという,誤ったアドバイスを受ける例が見られますから,注意が必要です)。複雑なのは,養育費や慰謝料など金銭が絡む場合,さらに子供の引き取りや面接を要求する場合です。日本の裁判所で,相手方に対する慰謝料支払を命ずる判決を取ったとしても,相手方が国外にいるのでは,実際に支払ってもらうのは著しく困難です。金銭を要求するのだったら,相手方が居住する国の裁判所で手続をしなければならないというのが現実。
子供の問題が絡むとこれも一層複雑になりますし,また,在留資格という別の問題が絡んでくることもあります。
国際結婚については,手引書も見かけますが,国際離婚についてはさすがにそれは見当たらないように思います。また,これら全ての問題について,トータルで対応できる場所も限られているという実際も,たしかにあります。当事務所でも残念ながら国外での訴訟,調停手続までは対応しておりません。
いずれにせよ,お悩みの場合には,各弁護士会の法律相談や,法律扶助協会などに相談していただきたいと思います。
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2005.08.29
改正刑事訴訟法の施行(11月1日)が迫りました。
既に以前触れましたが,被告人側に開示される証拠を,被告人側が公に公開することは禁止されています。
これにそなえて,当事務所でも,刑事記録を依頼者に閲覧していただく際の説明文書を作成してみました。
(1) 本件記録の写しを,事件の審理等刑事訴訟法の定める目的以外の目的で,他人に交付し,または提示し,インターネット等の電気通信回線を通じて提供することは,法律により禁止されています(刑事訴訟法281条の4)。
(2) 前項に違反する行為は,1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることがあります(同条の5)。
これではどうも脅迫まがいだが,やむを得ないところでしょうか?
それにしても,まだ有罪無罪も確定しない段階で,報道機関に捜査情報をたれながして報道被害を発生させているのは,決して被告人側ではないのに,被告人側にだけ縛りをかけるのにはきわめてアンフェアで,正直言って不満を感じます。
参考記事「アルカイダ関与が疑われて,勾留43日」(「日刊ベリタ」より)
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2005.08.26
朝日新聞8月25日付より
刑事記録は時に1千枚を超える。コピー代が10万円を超えた例もあり、犯罪被害者にとって大きな負担となっている。
犯罪被害者に対してもそうですが,記録の謄写費用というのは,前々から被告人にとっても大きな負担だったわけですし,民事裁判でも時には大きな問題になるわけです。刑事事件だけでなく,例えば医療訴訟などでは,膨大なカルテが証拠として提出され,それだけでも段ボール箱何箱分にもなってしまいます。
犯罪被害者側は政府や裁判所に値下げを求めてきたが、最高裁は「料金はコピーを請け負う側が独自に決めるもので関与できない」との立場から、対応を司法協会や弁護士会に委ねてきた。
と書かれていますが,裁判所にも,裁判を受ける権利に関わる重要な問題としてとして捉えてもらいたいものです。
法律扶助や訴訟救助の拡充というかたちで,裁判を受ける権利を実質化していくことが望まれます。
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2005.07.31
5 結び
なお,以上のような解釈では,はたして原著作者の権利はどうなるのか,という反論もあろう。いうまでもなく,原著作者の著作権は十分尊重されなければならない。たとえば,朗読者が原著作物の内容を改変して朗読したり,他人の著作物を自らまたはその他の第三者の著作物と偽って朗読したりしたら,これは原著作者の同一性保持権(著作権法20条)や氏名表示権(著作権法19条)の侵害となる。しかしこれらの著作者人格権の問題と,朗読それ自体が著作権を侵害するかどうかの問題とは,全く別の話である。
要するに,38条1項の要件を満たす非営利目的での朗読で,なおかつ原著作者の著作者人格権を尊重し,原著作物に忠実に朗読されている限りにおいて,朗読されること,もしくはその朗読が公開されることそれ自体が原著作者の著作権侵害であると考えるのは,いささか行き過ぎではないか,と私は思う。今日大きな社会問題となっている音楽や映像ファイルの違法コピー問題とは,明確に区別しなければならないと考えるのである。
すなわち,著作物そのものの複製が,著作権者の意図しないところで広まっていくところに,違法コピーの問題性がある。しかし朗読作品の場合,原著作物と聴衆との間には朗読者の個性と表現行為が介在している。朗読者が稚拙であったとしても,文字で表現された原著作物の価値まで貶められるとは思われない。しかし逆に巧みな表現による朗読作品はそれ自体,芸術的価値あるものとして認められるばかりか,原著作物に新しい命を吹き込み,原著作物への興味を喚び起こすことになる。朗読の公開は,音楽や映像作品の違法コピー,違法なファイル交換とは全く質の異なる行為と考えるべきであろう。
結局のところ,原著者の口述権,上演権を侵害しない範囲でなされた朗読であるかぎり,その録音を非営利目的で公開することは,原著者の公衆送信権を侵害するものにはならない,というのが,私の個人的な考えです。
なお,これは,あくまでも私の,受け手としての立場を反映していることは否定できず,著作権者の側からは別の法解釈もあり得ること,また現実に行われている著作権法の解釈・運用とは隔たりがあることを,念のためもう一度お断りしておきます。
ちなみに,(社)著作権情報センターのホームページに記載された著作権Q&Aシリーズ(ケーススタディ著作権 第3集「図書館と著作権」http://www.cric.or.jp/qa/cs03/cs03.html )によれば,同センターでは,私の見解とは異なり,図書の朗読会を催すことは38条の範囲内で可能であるが,朗読の録音を公に提供するには原著の著作権者の許諾を要するとの立場をとっているようですが,その場合,視覚障害者が図書の朗読にアクセスするためには著作権者の許諾が二重に必要になるという問題点があることが指摘されています。
最後に,本エントリーのきっかけをいただいた渡辺知明氏の朗読では,朗読部分を著作物の10分の1程度にとどめる等,原著作者の権利に対してもきめ細かい配慮がなされていることを特に付け加えさせていただきます。
(終わり)
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2005.07.29
3 著作物たる朗読は,原著作の二次的著作物か
単なる口述を超える創作性を有する朗読が,二次的著作物ではなく,原著作物を超えた独自の著作物であると解する余地もありうるが,それは朗読の芸術性,創造性をどう見るか,というきわめて根源的な問題に帰着し,一概に結論が出せるものではなく,具体的な朗読作品を離れて論じることもできない。
一応,ここは二次的著作物性を承認しておくのが無難と思われる。とすると,原著作物の著作者は,朗読された二次的著作物に対し,朗読者と同一の権利をもつ,ということになる(28条)。
なお,もしも仮に朗読作品が,原著作物の二次的著作物でない全く新しい著作物であるとしたら,これを公開し頒布することは,完全に朗読者の自由である,ということになる。
4 非営利目的による上演等と,その録音の公開の可否
非営利目的による口述,上演が著作権侵害にならないことは著作権法38条1項により明白である。
では,その口述,上演の録音を公開することはどうか。まず,大前提として,38条1項それ自体,聴衆,観衆の存在を前提とした規定であることを指摘しておきたい。
そして,前記のように,朗読が原著作物の複製物ではないとすれば,朗読の録音を公衆送信することは,原著作物それ自体の公衆送信には当たらないと解することができるように思われる(このあたりは異論もあるかもしれませんが)。公衆送信権は,古くは放送権として規定されていた部分であり,放送と複製との境界が不明になった今日的な状況に対応して改正されたもので,口述権,上演権などと並列的に規定された,著作権の具体的内容をなす権利の一つにすぎない。とすると,公衆送信権の直接の対象は,著作物またはその複製物であり,著作物の複製物に当たらない朗読の公衆送信については,口述権,上演権等の個々の権利のみを問題にすれば足りると考えるべきである。
ただし,朗読作品が,原著作物の二次的著作物にあたるとした場合,原著者は朗読作品に対し公衆送信権を持つことになる(著作権法28条)ので,朗読することが38条により可能だとしても,原著者の許諾を得ずに朗読作品を公衆に送信することはできないのではないか,との疑問も出てくる。しかし,先に述べたとおり「口述」も「上演」もそれ自体が不特定多数の観衆,聴衆の存在を当然の前提とする概念である。「口述」の概念規定(著作権法2条1項18号)をみると「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く)」とあり,「口述」の概念の中には,聴衆への伝達までが含まれている。また「口頭で伝達すること」が必ず「対面」でなければならないのかというと,必ずしもそうはではないだろう。「口頭で伝達する」とは,口述者の行為態様を表現したもので,伝達の手段を制限する意味ではないと思う。
38条1項による口述権,上演権の制限は,口述もしくは上演された音声を聴衆に伝達する権利に対しても及ぶ,と理解すべきではなかろうか。そうでないとしたら,朗読は複製にあたらず公衆送信権の対象でないと理解する場合,著作物性のない朗読は,口述権に対する制限の範囲内で聴衆へ伝達可能であるのに対し,より芸術性の高い著作物性を持つ朗読が,かえって強く制限を受けるということになってしまうが,これは明らかにおかしい。より高い芸術性を持つ朗読は,朗読者自身による公開がより自由でなければならない。
著作権法の規定する著作者の権利のうち,上演権および演奏権(22条),口述権(24条)は,他の権利,例えば複製権や公衆送信権などと異なり,行為者の創作的な表現行為を必要とし,それゆえそこから新たな二次的著作物が生まれる可能性を持っている。その場合,そこから生じた二次的著作物に対する原著作者の権利と,上演者,口述者の固有の権利(ないしは上演者,口述者自身の作品に対する自由)をどう調和させるのか,このあたりが検討課題である。
(続く)
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2005.07.27
1 朗読は著作物か
朗読には,単なる口述と,それ自体が創作性をもつ著作物としての朗読とがあり,後者は原著作物と別個の著作物として,朗読者にも著作権が認められる場合があることに注意しなければならない(著作権法2条1項18号は,著作物の口述と実演とを明確に区別している)。
すなわち,朗読と言っても,合成音声による機械朗読,小学生の本読みから俳優などの専門家による芸能としての朗読に至るまで,さまざまなものがある。単なる「本読み」であれば,思想,感情の表現とは言えず,著作物に該当しないことは明らかだが,専門家による,芸能としての朗読は,原著に対する朗読者の解釈と表現行為の結果であり,それ自体が創作性のある著作物となる。
この場合,原著の著作権と朗読の著作権は厳密に区別しなければならないし,朗読者の保有する著作権にも十分配慮しなければならない。
2 著作物の口述は,原著作物の複製なのか。
著作権法は,言語の著作物について,口述という概念を設け(著作権法2条1項18号),著作権者の権利として口述権を規定する(著作権法24条)。朗読の著作物性とリンクさせることが適当かどうか,異論があるかもしれないが,とりあえずここでは,著作物性を有する朗読は,口述というよりはむしろ上演(著作権法2条1項16号)の範疇に入ると考え,原著と独立した著作物性を取得しない朗読が,口述に該当する,と考えておく。
ところで,この著作物性を取得しない朗読(口述の結果)は,果たして著作物の複製になるのだろうか。もしもそうだとすると他人の著作の朗読は,著作権者の複製権侵害になる可能性が出てくる。しかし,文字で表現された文学作品を口述して音声化することが,「複製」に該当するとするのは,「複製」の概念を広げすぎるのではないか。実際問題,朗読を聞き通すのは時間と集中力が要求されるので,朗読の録音を本の代わりにする,という場面はあまりないと思われる。また,口述された朗読をわざわざ再筆記して文章化するということも考えにくい(口述筆記というのがいかに大変な作業か,法律事務所職員や裁判所書記官ならよく知っている)し,段落分けや行あけ,強調文字の使用など,音声化できない文章表現も少なからず存在する。
なお,視覚障害者のために「点字による複製」と「録音」が認められている(著作権法37条)が,ここで認められているのは著作物そのものの録音であり,「口述」を含まないことには注意しなければならない。37条が,視覚障害者のため,一定の要件のもとで著作物の複製を認めた(「録音」は複製の一態様である=著作権法2条1項15号)規定であることは明白だが,法は,複製権の制限について37条で,複製に当たらない口述権の制限については38条でというように,両者を分けて規定したものと考えられる。(そのように理解しないと,視覚障害者が図書館などで文学作品にアクセスする方法として,点字はOKだが朗読(口述)の録音は不可,というおかしな結論になってしまうが,これはいかにも不当である。)
またここで注目すべきは,脚本その他演劇用の著作物については,上演,放送,放送の録音録画が複製にあたる,とされている(著作権法2条1項15号イ)ことである。このこととの対比(反対解釈)からすると,演劇用でない文学作品の口述は,原著作物の複製にはあたらない,と解される。なお,傍論ながら,朗読テープの製作販売は,著作権法80条3項にいう「出版権の目的である著作物の複製」には該当しないとした判例(東京地裁平成3年5月22日判決)がある。
すなわち,著作物性のない朗読(演劇用作品を除く)について,原著者の口述権の問題として考えるべきであって,複製権の問題ではない,と考える。
(続く)
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2005.07.26
前回のエントリーに思いがけずトラックバックをいただいたので,朗読と著作権の問題について,簡単に論点を整理してみたいと思います。
なお,ここに掲げるのはあくまでも私の個人的な考えであり,学説上広く承認されたものではありませんし,ましてや具体的な事件について,裁判の結果などを保証するものではないことを念のためお断りしておきます。
以下,目次
1 朗読は著作物か
2 著作物の口述は,原著作物の複製にあたるか
3 著作物たる朗読作品は,原著作物の二次的著作物にあたるか
4 非営利目的による上演等と,その録音の公開の可否 〜 結び
(この項続く)
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2005.07.08
下野新聞のページに興味深い連載があります。
誤認逮捕・起訴
まさに有罪と無罪は紙一重でした。
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2005.06.28
平成16年の刑事訴訟法の改正で非常に気になっているのは,被告人及び弁護人が刑事手続上で開示された証拠等を,刑事訴訟法が列挙する目的以外のために使用することが禁止され,しかもその違反に罰則が科せられるものとされたことです(刑訴法281の4,281の5条)。
もちろん関係人のプライバシー権は保障されなければなりませんが,プライバシー権の侵害の有無にかかわらず,事件記録を広く公開してその是非を裁判外で問うことは許されず,犯罪として処罰されうることとなりました。
また,刑事手続と併行して行政処分の対象となる場合に,行政処分を争うために刑事記録を使用することは,許される使用目的には含まれていません。
目的外使用が刑事罰の対象となる,ということは,たとえば開示証拠等を被告人や弁護人から入手した報道記者なども,共犯(共同正犯)として処罰されうる,ということを意味しています。
プライバシー権侵害の有無を問わず,開示証拠を公開する行為そのものを,罰則付きで厳しく制限することは,裁判公開の原則と矛盾するように感じられます。
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2005.06.13
当事務所にて担当した事件で、イスラム教国の未成年者との特別養子縁組を許可する審判例が出ました。
イスラム教国では養子縁組制度がないとされていますが、そのイスラム法を準拠法としつつ、本国で孤児院から養親(養母のみ日本人)に引き取られ、本国で「子」として登録されていることをもってして、本国において未成年者と養親との間に特別養子関係が成立しているものと認定し、民法817条の3第2項但し書き(夫婦の一方の嫡出子を養子とする場合は単独養子縁組を可とする)により、日本人養母と未成年者との間の特別養子縁組を許可しています。
イスラム教国において孤児院から引き取られて養親の「子」として登録されている関係を、特別養子縁組関係と同視し、嫡子と認めていることは大変興味深いことです。
ただ、夫婦共同縁組とせず、単独養子縁組とした点は、若干議論の余地がありそうです。イスラム教国国籍である養父についても縁組を認めて差し支えない事例とも思われるのですが、本国においては嫡出性があると認定することで、この部分の判断を避けたようです。
平成15年に東京家裁において、パキスタン人未成年者を、同国人と婚姻中の日本人女性が単独普通養子縁組することを許可する審判例が出ています(ジュリストNo.1267,p211)が、概ねこの先例を踏襲した形となりました。
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2005.05.30
住基ネット訴訟:個人情報削除認める、全国初 金沢地裁(毎日新聞より)
この春施行された個人情報保護法は,個人情報を保有する個人情報取扱事業者に対し,個人情報の訂正削除を求める権利を認めていますが,行政の保有する個人情報についても,当然,個人が自らの個人情報を管理する権利が認められなければなりません(行政個人情報保護法,独立行政法人個人情報保護法に規定あり)。
従来の最高裁判例をみると,少なくとも表現の自由との関係においてはプライバシー権を重視する判例が多かったといえますが,「公共の福祉」との関連においては,「公共の福祉」を優先させてプライバシー権の保護を後退させる判断も少なくはなかったようです。
しかし,個人情報保護法は,民間事業者を行政と同列に取り扱って,民間事業者の行為をも一般に規制の対象としました。このことを裏返せば,個人情報の保護という観点において,従来のような一般的抽象的な「公共の福祉」論はもはや成り立たない,とも言えそうです。
さて,今後金沢地裁に続く判断が出るかどうか。
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2005.05.24
最近当事務所では,養親の一方がイスラム教国の方である場合の養子縁組に関する相談を,いくつか受けております。
一般に,イスラム法は養子縁組を認めないと言われているため,イスラム教国の方が養親となる場合,そもそも縁組が法的に可能かどうか,という疑問が生じます。先例は少ないですが,東京,千葉などで(特別)養子縁組を認めたケースが若干あるようです。
縁組によって監護する必要がある場合に,杓子定規にイスラム教国の方の養子縁組を否定するのはあきらかに不当と思われ,この部分を国際私法の理論上,どう克服するかが課題となっています。
私見ですが,「イスラム法で養子縁組を認めない」というより,むしろ「養子」という概念がないだけであって,他人の子を監護することが禁止されているものではなく,イスラム法を準拠法とする場合であっても,我が国における養子縁組をあたまから否定するのは誤りではないか,と考えています(このような理解で良いかどうか,イスラム法に詳しい方がおりましたらご教示いただきたいと思います)。
今後,類似のケースはどんどん増えていくでしょうから,国際家事実務の中で,より重要な論点となると思われます。
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2005.04.26
違法な支出を自治体に返すよう求める住民訴訟の途中で、公金が裁判外で任意に返還された場合も、地方自治法が定める「勝訴した場合」とみなして弁護士費用を自治体に請求できるか――。この問題で、最高裁第三小法廷は26日、「裁判上、勝訴が確定していることが必要」とする初判断を示した。自治体への請求を認めた二審判決を取り消し、住民側の費用請求を棄却する判決を言い渡した。(asahi.com 4月26日付記事より)
住民訴訟は,地方自治体の利益のために住民が地方自治体に代わって提起する訴訟(代位訴訟)なのだから,地方自治体に有利な結果が得られた以上は,当然その経費を自治体に負担させるべきでしょう。住民訴訟の提起を制限するような方向での最高裁の判断は不当に思います。記事によれば「裁判外の返還で、自治体に経済的な利益があったとしても訴訟がどの程度寄与したかは不明確」とのことだが,訴訟提起したからこそ被告からの返金があったのは,誰が見ても明らかではないでしょうか。
最高裁判断の背景には,住民訴訟を代位訴訟と見るのではなく,むしろ地方自治体と対立する訴訟とみる考え方があるように思われます。
ちなみに,このような違法支出の返還を求める住民訴訟が提起された場合,被告側の弁護士費用は,全面的に地方自治体側が負担することとなります。これは平成14年の改正地方自治法により,住民訴訟の被告が,個人から,地方自治体の執行機関または職員とされたことによるものです。
平成14年の地方自治法改正は結果として地方自治体の首長や職員が,個人として住民訴訟の被告となるリスクを低減させることになりましたが,それがモラルの低下をもたらさないか,心配です。
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2005.04.13
非嫡出子への区別は違憲 フィリピン人母の男児に国籍
婚姻関係のない,外国人と日本人の間に生まれた子供たちの国籍に関する画期的な判決です。またこれは非嫡出子を抱える外国人女性の在留資格にも結びつくという点でも大きな意味を持ちます。
日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれたフィリピン国籍の子ども九人が、両親が結婚していないことで日本国籍を取得できないのは不合理な差別で違憲だとして十二日、日本国籍の確認を求める訴えを東京地裁に起こした。(中日新聞4月13日付)
おそらく本日の判決を見越しての訴訟提起と思われますが,同様の事例はたくさんあるはず。最高裁で違憲判決が出ないうちは,法務省の対応は変わらないでしょうから,今後同種の訴訟が増えると思われます。
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2005.04.05
身内の方が不当に退去強制処分を受けたので,訴訟をしたいというご相談はたびたび受けますが,実際に提訴に至るケースはほとんどありません。
訴訟の提起はすなわち身柄拘束の長期化を意味するということと,行政事件特有の勝訴率の低さが,大きな障壁として立ちはだかっているのです。どんなに退去強制が不当だと思っても,いっそのこと国外に出た方が自由の身になれるからです。身柄の拘束には勝てません。これが入管当局の強さ?の秘訣であり,また収容施設における処遇の改善が進まない元凶のようです。
これは入管に限らず,法令により人の意思に反してその身体を拘束することが許されている施設に共通する問題のように思われます。
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2005.03.31
先週は,地方での行政訴訟の準備,提訴のため,更新はお休みしておりました。
地方での行政事件はまだまだ少なく,事件番号もまだひと桁台。ちょっと話題性のある事件でした(というか,地方紙や地方のテレビ局にとっては,他に話題がないのか)ので,裁判所ではカメラが待ち構えておりました。
先日,国選弁護の受任に行きましたが,圧倒的に外国人の不法滞在事件が多いのには,いつもながらに驚かされます。一度の受任手続では弁護人が決まらない事件も少なくはありません。刑事手続を早期に終わらせるために,費用をかけてでも私選弁護人を選任する方があるのも,理解できます。それにしてもこれだけの外国人事件の捜査にかける時間,費用と労力を,もっと有効に使う方法がありそうな気もしますが。法務省の出入国管理基本計画が発表されていますが,国選事件の大半を不法滞在事件が占めるという状況は,まだまだ続きそうです。
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2005.03.18
自民党は17日、政府が再提出を予定している人権擁護法案について、人権の啓発や相談などにあたる人権擁護委員への外国人の就任を制限する方向で検討に入った。(読売新聞3月18日)
現行の人権擁護委員制度では国籍条項はありませんが,外国人の委員さんというのはおそらくいらっしゃらない,もしくはいらっしゃるとしても極めて少ないように思います。しかし,このあたりはあまり議論されていない様です。
私見としては,人権擁護法案が,本当に人権擁護を目的とするのなら,その立法趣旨と外国人の排除とは,両立しがたいと思うのですが。
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2005.03.07
門の外でも「住居侵入」とはこれ如何に?(百万人署名運動のトップページ)
さすがに勾留請求が却下されたようですが,これはあまりにも露骨ですね。
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2005.03.04
ご存知のように、2003年10月の法務省入管局、東京入管局、東京都、警視庁
による「共同宣言」以降、非正規滞在外国人の摘発は恐ろしいほどの勢いで増加の一
途を辿っています。
APFS(注:ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY)会員の非正規滞在者も、この間次々と摘発されています。特に2月に入っ
てからは運営委員を含む6名の会員が摘発されました(内、2 人は労災で「留置に耐
えられない」との理由で拘束を解かれた)。
2月26日にはAPFS事務所に賃金不払いの相談にやってきた非正規滞在バング
ラデシュ男性が事務所を出たところで職務質問を受け入管法違反容疑で逮捕されると
いう前代未聞の事態が起こりました。(全文はこちら)
不法滞在者を取り締まること自体はともかくとして,よりによってこんな場所で待ち伏せしなくても良いでしょう。これでは入管法に違反して不法滞在者を雇用し,労基法に違反して賃金を支払わない悪質な雇用主に味方するようなもの。
不法滞在者は安く,時には無賃金で働かせることができ,しかも都合が悪くなれば入管に通報していつでも追い出すことができるという,一定のニーズ(?)が現に存する以上ブローカーも暗躍を続けるのであって,根源を絶たない限りは不法滞在問題はなくならないのです。
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2005.02.28
いくら立派な判決をとっても判決内容を実現(執行)できなければただの紙切れでしかありません。
昨年末,最高裁で核燃料サイクル開発機構に対し,放置された放射性ウラン残土の撤去を命ずる裁判が確定しました。
しかし,判決確定後もその実現は困難を極めているようです。(詳細,新聞報道)
普通は,執行段階でゴネるのはいわゆる占有屋などと呼ばれるその筋の人たちの専門分野なのですが.......。
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2005.02.23
最近話題になっている偽造キャッシュカードを用いた預金の引き落とし。
ところで,偽造カードで引き落とされるのは,一体誰のお金なんでしょう?一般には預金者が被害を受けているので銀行が被害補償すべき,と言われているようであり,偽造カードで真の預金者の預金が引き出されている,と考えられているようです。
しかし,民法の一般原則から言えば,Bという人物がAと名乗って契約をして,Aにその効果が生じるのは,BがAの代理人である場合,あるいはそう見られても仕方ない場合(AがBに白紙委任状を与えていたなど)に限られるはずです。したがって,偽造カードによる預金引き落としは,犯人が預金者の預金を盗んだのではなく,偽造カードを用いて銀行に本人であると誤信させてATMから現金を騙し取った詐欺罪になるというのが,刑法上の定説です。
そうすると偽造カードで引き出されたお金は銀行のお金であって真の預金者の預金ではないはず。にもかかわらず銀行が約款を盾にして預金者に被害を押し付けて,犯罪者の追求を怠ってきたところに,大きな問題があります。
参考記事(毎日新聞2月23日付)
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2005.02.18
朝日新聞2月18日付記事から
栃木県警宇都宮東署が、宇都宮市内の無職の男性(53)を強盗容疑で誤認逮捕し、宇都宮地検もそのまま起訴していたことが18日、わかった。男性は当初、起訴事実を認めていたが、昨年末の公判で一転して否認。別の強盗事件で先月逮捕された市内に住む組立工の男(56)が犯行を自供し、県警は男を今月17日に強盗の疑いで書類送検した。
無職の男性は昨年8月、宇都宮市内で女子中学生に暴行した疑いで逮捕された。県警はその後、4月と5月に市内のケーキ店とスーパーで起きた強盗事件の容疑者である疑いを強め、再逮捕して追送検した。
県警によると、現場に残された足跡は一致しなかったが、男性の写真を見た被害者が「似ている」と話したという。さらに、実況見分の際に男性が「ここから建物に入った」と説明したことなどが調べと一致したという。宇都宮地検は起訴を取り下げておらず、公判の中で無罪を明らかにしていくとみられる。
報道後段の「男性」とはどちらをさすのかよくわかりませんが,おそらくは誤認逮捕された方なのでしょう。いわゆる「面割り」証言が必ずしも十分信用できないことは,よく言われることです。なぜ足跡の不一致という客観的事実に反してまで逮捕,起訴したのか?そして,なぜ彼は起訴後も事実を認めていたのか?実況見分の際の説明が調べと一致した,といいますが,警官にとりかこまれ,手錠をはめて腰縄つけてする実況見分で警察の把握している事実と違う説明ができるはずがないでしょう。
真犯人が自供したから良かったものの,もしもそうでなかったら果たして彼は無罪を勝ち取れるでしょうか?
冤罪事件はごく身近なところで起きている,という話。
(追加)読売の記事が詳しいようです。これによるとすでに検察側は懲役7年の求刑をしていたとのこと。
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2005.02.09
前回のエントリーの後に,asahi.comに記事が出ていました。
「犯罪収益被害者に」実行されぬ制度の不備 五菱会事件
追徴しないことに不満があるのはもちろんですが,犯罪被害者に対する給付制度に不備があることこそ大きな問題なのではないでしょうか。
現行の犯罪被害者等給付金制度では,財産犯罪の被害者への公的給付はありません。しかし,本当にそれで良いのか?今回のように犯罪者が多額の資産を保有している例は極めてまれなケースでしかありません。犯罪者への追徴や懲罰的賠償を論ずるのなら,これとセットで犯罪被害者に対する公的援助を充実させて欲しいものです。
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ヤミ金融:梶山被告に懲役7年 追徴金は認めず
指定暴力団山口組五菱会(二代目美尾組に改称)の組織的ヤミ金融事件で、出資法違反(高金利)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)に問われた同会系貸金業総括経営者で「ヤミ金の帝王」と呼ばれた梶山進被告(55)の判決公判が9日、東京地裁であった。飯田喜信裁判長は求刑通り懲役7年、罰金3000万円を言い渡したが、併せて求刑されていた没収170万ドル、追徴金約51億円は「被害者救済に充てるべきだ」として認めなかった。(毎日新聞 2月9日付)
追徴金を認めなかった判決には,批判もあるようですが,では,被害者の被害回復,損害賠償請求はどうするのでしょうか。追徴金は国庫に帰属しますが,国庫負担で被害回復が図られるわけではないのです。追徴金を課すべきとする検察側は,被害回復の点をどう考えているでしょう?
ただ,ヤミ金のトップがまさか契約書に名前を出しているわけでもありませんし,下部組織と上部組織のつながりも隠蔽されているはず。一般の民事訴訟で「ヤミ金の帝王」をいきなり訴えても,立証は大変です。裁判所も被害者救済を言うならそのあたりまで十分気を配ってもらいたいものです。
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2005.02.04
当事務所に,事務所で自己破産申立をした債務者宛の請求書が届いた。債権者名簿にない某サービサーの封筒であるが,請求書の記載内容はむしろサービサーではなく当該債権者(某リース会社)が書いたように見える。ところがどこにも作成名義人の押印がない!?そして封筒に記載された住所・電話番号は実在する許可を受けたサービサーのものと全く同一である。
ちょっと検索してみると実在する債権回収サービサーの名による架空請求,不当請求はかなり横行しているようである。当事務所に請求書を送付してきたサービサーは,ホームページの記載によるともともとは関東郊外の不動産会社で,サービサー制度成立とともに弁護士を役員に迎え入れて法務省の許可を取ったもののようである。しかしこともあろうに法律事務所宛にこんな請求書を送付して,しかも破産申立済なのに「法的措置をとる」などと決まり文句を書いてくるのは,どこか間抜けでちょっとかわいい気もする。
それにしても近時架空請求,不当請求,振り込め詐欺が社会問題となり,また個人情報の流出も後を絶たないわけだが,こんなわけのわからないサービサーを乱立させて,債権回収を受託させること自体,これらの犯罪の温床になっているのではないだろうか。
(参考 「債権回収会社と類似の名前をかたった業者による架空の債権の請求にご注意ください」
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2005.01.31
最近,拘置所内の医療に関する判決がいくつか出ています。
東京拘置所内で脳こうそくと診断された際に適切な治療を受けられず重い障害を負ったとして、住居侵入罪で公判中の被告男性(55)と家族が国に賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京高裁であった。岩井俊裁判長は、120万円の賠償を命じた1審・東京地裁判決(04年1月)を取り消し、男性側逆転敗訴を言い渡した。1審は、30時間以上転院させず拘置所内に留め置いた点を違法としたが、岩井裁判長は「拘置所内の医療施設は専門病院によるきめ細かな看護体制に及ばないが、生命の尊厳を脅かすほど粗雑な診療ともいえない」と指摘した。(毎日新聞1月18日付)
傷害致死罪で実刑判決を受け、控訴していた男性(当時45歳)が2002年、東京拘置所で自殺したのは、適切な精神薬が与えられなかったためとして、男性の母親が国に1億4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が31日、東京地裁であった。
瀬木比呂志裁判長は「男性の求めた投薬を与えなかったのは、拘置所の医師の裁量を逸脱し、違法だ」と述べ、慰謝料など約3055万円の支払いを命じた。
判決は、男性が求めていた精神薬を東京拘置所が与えなかったことから、「精神的に著しく不安な状態に陥り自殺に至った」と指摘。さらに、自殺に使用したぞうきんを事前に撤去しなかったり、発見時に人工呼吸をしなかったりした過失があると認定した。(毎日新聞1月31日付)
拘置所の医療水準は,一般の病院と比べるとかなりの隔たりがあるようです。しかもカルテの開示はおろか,診療にあたる医師の名前すら知らされません。
もともと拘置所に勾留される被疑者・被告人は無罪と推定されるはずなのですから,ぞんざいな扱いを正当化することはできないのです。
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2005.01.25
私がここであれこれ書くより入管問題調査会のページを一度覗いていただくのが良いと思います。
某国の人権問題を真剣に問題視しているのなら,日本国内ではせめて人間を人間として待遇してもらいたいものです。
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2005.01.11
立川ポスティング事件との関連上,昨年末東京都葛飾区で共産党支持者がビラまきで逮捕された事件についても触れないわけにはいかないようです。
立川事件無罪判決後わずか1週間の12月23日に行なわれたこの逮捕劇は,「無罪判決に屈することなくビラまきに対しては住居侵入容疑で逮捕し続けますよ」という,警視庁の不退転の決意?を示しているようです。
ポスティングは無罪とされた後でも,逮捕勾留を合法的になし得るというのは,奇妙なこと。令状実務と判決実務との間で,二つの基準が使い分けられているのです。
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asahi.comの「裁判所から本物の督促状 振り込め詐欺、さらに巧妙化 」という記事が話題になっているようです。裁判所に虚偽の契約書等を提出して支払命令や少額訴訟を申し立てて,これを根拠に金銭の支払を請求するというもの。悪質な犯罪です。
このような例は私も相談を受けたことがあります。通常の架空請求と異なり,督促手続であれば2週間以内に異議を申し立てて応訴しなければなりませんし,少額訴訟を利用した請求であれば,指定期日に出廷するか,答弁書を作成して提出しなければ,いかに内容虚偽のものであっても原告の請求が認容されてしまいます。
心当たりのない訴状や支払命令を受け取ったときは,直ちに弁護士会の法律相談や国民生活センターなどに相談してください。
それにしても裁判所がこのような悪質な犯罪に利用されてしまうようなら,支払督促の制度なども見直さなければならないでしょう。
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2005.01.03
当事務所提携行政書士古川峰光先生からの情報です(ありがとうございます)。
神奈川県警は24日、結婚相手の韓国人女性(35)(入管難民法違反の罪で起訴)が不法残留と知りながら、捜査機関に通報しなかったとして、幸署生活安全課の警部補(44)を入管難民法違反(不法残留)ほう助の疑いで横浜地検に書類送検するとともに、減給10分の1(1か月)の懲戒処分にした。
(中略)
調べによると、警部補は、女性に在留資格がないことを知りながら2003年11月ごろから同居を始め、今年9月、横浜市南区役所に婚姻届を提出後も、不法残留の事実を捜査機関に通報しなかった疑い。
女性は1995年4月、短期滞在ビザ(査証)で入国し、期限切れ後も日本に残留。警部補とは、同県横須賀市の飲食店で働いている際に知り合った。結婚後、日本人配偶者として東京入国管理局に在留許可を申請しており、現在審査中。
(後略)
(読売新聞2004.12.24)
通報しないという単純な不作為が,不法残留の幇助に該当するのか?
警官としての職務上の告訴義務違反として不作為による幇助が成立する,とする法解釈のようです。
詳しい事案がわからないので何ともいえませんが,実際には入管に出頭しているようですから,もしも婚姻届と同時に入管に出頭しているのなら,偽装結婚でもないのに不法残留の「幇助」とするのはちょっと行き過ぎのような。
もっとも,在留特別許可の許否という観点からすれは,むしろ「夫は職をなげうってでも結婚を選んだ」として,積極要素になるのかもしれませんが。
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2004.12.24
外国で結婚して日本で未届けのある日本人が,日本で裁判離婚したいと,とある法律相談に行ったら,まず日本で婚姻届を出せと言われたそうです。
これはとんでもない話。離婚するためにわざわざ日本の市(区)役所に婚姻届を出す必要はないのです。
たしかに婚姻の成立要件は各当事者についてその本国法によるものとされています。しかし他方,日本の裁判所が,外国法上で有効に成立した婚姻について,離婚の裁判を下すことは,日本の裁判管轄が及ぶ事件である限り可能なことです。日本の裁判権が及ぶかどうかということ(裁判管轄)と,裁判所がどこの国の法律を適用して判断すべきか(準拠法),ということは全く別次元の問題ですが,現実の場面では専門家でもなかなか判断できないものです。
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2004.12.20
当事務所にも国際養子縁組の相談が増えています。
外国人を養子に迎える場合には,養子の本国法で定められている養子の保護要件(実父母の同意・承諾等)が必要になるので,養子の本国法上での養子縁組手続を平行して行なうとスムーズに進むと思われます。
当事務所では外国における養子縁組手続を直接は取り扱っていませんが,
社会福祉法人 日本国際社会事業団(ISSJ)
が,国内で国際養子縁組等の手続を仲介しております。
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2004.12.17
立川自衛隊官舎ポスティング事件はみごと第1審で無罪判決が出ました。
じつは,ポスティングを住居侵入であるとして強制捜査した事例を,私も担当したことがあります。被疑者不詳のまま数カ所の家宅捜査が行なわれたため,私がビラ入れした本人に付き添って,「自首」したので逮捕はもちろん起訴もされませんでした。当時,私も「よりによってなんでそんな場所(警察官住宅!)にビラなんか入れるんだ」ときつく説教した次第です。
普通はこのような件は別件捜査の口実なので起訴までは行かないのですが,この手の容疑でも裁判所は捜査当局の令状請求があれば簡単に捜査令状,逮捕令状を発布しているということに大きな問題があるのです。
今回の東京地裁八王子支部の判決が判例として定着すればこのような住居侵入を口実とする強制捜査はなくなるのですが,なにせ高等裁判所では殺人犯がズボンを脱ぎながら殺人を敢行したりしますから,まだまだどうなるかわかりません。
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2004.12.16
立川テント村ポスティング事件で無罪判決が出ました。
当然といえば当然ですが,弁護団の皆さんの努力には頭が下がります。まだ控訴審も油断はできません。
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2004.12.15
「確定判決等は,犯人が犯行時において五点の衣類全部を終始通常の方法で着用していたと断定しているわけではなく,例えば,犯行の途中でズボンを脱いだなどという可能性も否定できないのである」
これは,いわゆる袴田再審請求事件の即時抗告申立に対する平成16年8月26日付東京高等裁判所決定からの引用である。証拠とされた衣類の血痕を仔細に鑑定したところ,外側のズボンに付着した血痕より内側のステテコに付着した血痕の方が広い範囲に渡っており,血痕が被害者の返り血であるとする有罪判決の認定に対し,「ステテコの上にズボンをはくという通常の着用状態で血液が外部から浸透して付着したものとは認められない」とする鑑定意見に答えたものだという(詳しくは日弁連人権ニュース第22号の伊豆田弁護士の文章をご覧いただきたい)。
しかし,殺人犯が犯行中にズボンを脱ぐとは,実に豊かな想像力!そして豊かな想像力に裏付けられた貧弱な決断力。
一人の人間の有罪無罪を,豊かな想像力で決めることはできないだろうに。
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2004.12.14
離婚後300日以内に出生した子は,前夫の子と推定され,戸籍上の父の欄には前夫の名前が記載される(民法772条)。
ところで,外国で離婚した場合には,300日以内とは外国での離婚成立から数えるのか?それとも日本の領事館や役所に離婚届を提出した日から数えるのだろうか?
最近の相談事例から判明したが,どうも法務省では,嫡出推定の期間は,日本の領事館等に離婚届を提出した日から起算する扱いとしているらしい。しかし,外国で生活していた方の場合には,離婚届の提出が遅れることが多く,そうすると離婚した前夫が父として記載されてしまうことになる。このため,外国では父子でもなんでもないのに,日本の戸籍の記載だけ父子として記載されてしまうという,極めて奇妙な現象が起きる。
こうなると戸籍の記載を訂正するには,原則として嫡出否認の訴えによる以外にないが,嫡出否認の訴えは,前夫が子の出生を知った日から1年以内に提起しなければならないという厳しい制約がある。
父子かどうか,DNAを調べればすぐ分かるこの時代に,「嫡出の推定」などというのがそもそも時代遅れな規定だと言わなければならない。
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当事務所の扱う事件の性質上,諸外国の法令の調査は必須です。
米国など,ネット上で法令が検索できる国もふえてきました。
その他,詳しい調査のためには,
1 東大外国語文献センター
2 国立国会図書館 議会官庁資料室などが参考になります。
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